2025.9.30-10.20
la Galerie du 19M Tokyo
企画展 “Beyond Our Horizons”
9月30日から10月20日まで、六本木ヒルズ森タワー52階「東京シティビュー&森アーツセンターギャラリー」において開催された、日本とフランスのクラフツマンシップを紹介する展覧会“la Galerie du 19M Tokyo”。
弊社の徳田佳世は、シャネルとle19Mと協働し、日本とフランスのクラフツマンシップ、そしてその背景にある文化や思想への深い理解を持つエディトリアル コミッティの一員として、安藤桃子氏、西尾洋一氏、緒方慎一郎氏、アスカ ヤマシタ氏とともに企画展示「Beyond Our Horizons」のキュレーションを担当いたしました。
また、橋詰隼弥は同展の会場デザインを手がけました。アトリエ九間と共にアトリエとランデブーを設計し、数寄屋の工務店である藤森工務店が施工。フォレストは木桶作家の中川周士と共に空間を作り上げました。
<参加作家一覧>
A.A.Murakami, アトリエ九間, ウスマン バ, デザイン橡 , 永樂善五郎, ジュリアン ファラッド, 藤森工務店, 藤田雅装堂, ポーリーン ゲリエ, 五十嵐大介, クララ アンベール, 石垣昭子, かみ添, 金沢 木制作所, 川人綾, ハルミ クロソフスカ ド ローラ, 小嶋商店, konomad (河野富広 / 丸山サヤカ), トーマス マイレンダー, 益田芳樹, 満田晴穂, 中川周士, シモーヌ フェルパン, ヘレナ ルデサー, 鈴木盛久, 髙室畳工業所, 舘鼻則孝, グザヴィエ ヴェイヤン, ニック ウッド
<le19Mに集まった11のメゾンダール>
アトリエ モンテックス, デリュ, ゴッサンス, ルマリエ, ロニオン, ルサージュ, ルサージュ アンテリ ユール, メゾン ミッシェル, マサロ, パロマ, スタジオ MTX
写真は全て永禮賢
「ランデブー」
「le Rendez-vous(ランデブー)」と名付けられた集いの場は、Beyond Our Horizonsの象徴であり、数寄屋職人とle19Mに集うメゾンの職人たちが、共同して作り上げたものです。
le19Mの職人たちが長い歴史の中で培った技術が、服を作るだけでなく、日本の職人とのコラボレーションにより建築のスケールへと磨き上げられ、畳や障子、引手といった作品たちの細部に至るまで洗練された美が宿っています。その造形は、伝統と革新が響き合い、職人たちの研ぎ澄まされた感性と技術が息づく場所となっています。
前面には、ガブリエル シャネルのアパルトマンから着想を得た、弧を描く28枚のガラスが借景として、ランデブーとその奥に見える東京の景色を映し出します。
「ツイード畳」
高室畳工業所 × Lesage
畳を彩る畳縁は、空間を区切るだけでなく、柄や色によって印象や格式、マナーを伝える役割を担っています。高室畳工業所による38帖の畳の間には、ルサージュのACT3による芸術的なツイードが施されました。
水平線を強調するツイードの縁による畳の間が来場者を迎え、人々が集まり、語らう空間を作り出します(写真左)。
「太陽と月」
Desrues
数寄屋の中で存在感を放つ引手には、見立ての心や素朴さに遊び心と風雅が込められています。テーマは「エクリプス(食/蝕)」。装飾のアトリエの技術と美意識が、光を放つ宇宙の営みへと昇華し、4つの引手それぞれが太陽の満ち欠けを東西の板戸に映し出します(写真右)。
「四季」
Atelier Montex × Lesage Interieurs × 藤田雅装堂
フランスを代表する刺繍工房、Atelier MontexとLesage Interieursが協働し、フランスと日本の植物の刺繍による四季の慶びを謳います。
その調べに楽譜を添えるように、藤田雅装堂が刺繍されたオーガンザを弧を描く障子へと美しく設えました(写真左)。
「雷神の雲」
Goossens × 益田芳樹
上空218mの空高い集いの場の正面で出迎えるのは、雷神が操る雲を着想とした沓脱台です。彫刻家・益田芳樹が蠢く雲をかたどり、Goossensが稲妻のオーナメントを添えました。
自然のエネルギーと手仕事の造形美が交錯するこの沓脱台は、外(俗)と内(非日常)を隔てる「結界」として、特別な静けさへと人々を導きます(写真右)。
「フォレスト」
“la Foret(フォレスト、森)”は、人々にとって未知の領域や試練の場として存在してきたと同時に、生命や精霊が宿る神聖な場です。道中に立ち並ぶのは、木桶の可能性を拡張し続ける職人、中川周士による樹々たち。
これまで工芸と建築の境界を越える工芸建築の可能性に共にチャレンジしてきたからこそ制作が可能となった7本の大樹の中には、日仏の職人たちによる作品が宿ります。
Beyond Our Horizonsの会期中、東京の中心、52階、地上218メートルに束の間現れるクリエイションの森では、日々、大いなる自然と向き合いながら、創造の探究を続けるクリエイターたちの作品を紹介します。
「佐保姫、しし踊り、竜田姫」
Paloma × 五十嵐大介
山は、美しさ、豊かさ、畏れ、神秘を湛える存在。漫画家・五十嵐大介は、自然を背景ではなく、そこに生きる魂として描き続けてきました。本展では、木々や草花、動物、人間が等しく息づく春・夏・秋の風景を描き出し、自然と人が溶け合う瞬間の静かな奇跡を紡ぎます。
その世界に、水という命の象徴を添えるのは、Paloma。 五十嵐は今回、絵絹に描くことに初めて挑戦し、その幻想的な世界に、Palomaの柔らかな素材で立体的な表現を生み出す職人技が、触覚的な奥行きを与えます。
「Trunk」
中川周士
「Leiko, from “Croissance” series」
Goossens × シモーヌ フェルパン(写真左)
「Butterfly Crown」、「Athene Noctua, Ame-no-kaku」
Goossens × ハルミ クロソフスカ ド ローラ(写真右)
中川が作る幹のウロの中には動植物や鉱石など生み出された宝物がそっとこちらを見つめています。創造の森の中をゆっくりと散策すると、自然と人との幸福な語らいが木霊しているようです。
「Okinawa」
Lognon × デザイン橡
「網代」は、竹や木を編んだ漁具や敷物が起源で、その美しい編み目模様は日本の伝統技法「網代貼り」として発展しました。手がけてくれたのは「小林へぎ板店」の小林鶴三。木曽の樹齢300年を超える年輪が詰まった天然ネズコを1枚1枚割り、手でへぎ、作られたもので、継承者がおらず、途絶えてしまうかもしれない技術。
そのパターンから着想を得て、Lognonのコレクションのひとつであり、日本からインスピレーションを受けて作られたという「Okinawa」のプリーツ型を用いて、デザイン橡が織られた茶色の綿生地にプリーツを施しました。
デザイン橡が制作した手機は、会期中、職人が丹後のきびそとle19Mから提供された織物を用いた裂き織りでラグを制作。
「標釉松画茶碗」、「黒焼締鉢」、「組紐の松」
Atelier Montex × 永樂善五郎
永樂家は、千家十職の一家として、室町時代後期より茶道具・土風炉を代々制作してきました。18代永樂善五郎は、明治期以降途絶えた土風炉の再興を志し、現代の表現も探究しています。
本展では、Montexと協働し空間作品を展開。茶碗に描かれた枝葉が空間に広がり、夜空のような漆黒の土風炉の技法を用いた鉢のもと、香合となった子どもたちの笑い声が花開きます。
「花衝立」
Lemarie × かみ添 × 藤田雅装堂 × 金沢 木制作所
紙の部屋を包み込むのは、Lemarieによるコサージュと、唐紙師・かみ添が手がける唐紙です。本展では、Lemarieがデザインした植物紋様を金沢 木制作所が板木に彫り、かみ添によって特別な唐紙が伝統技法によって摺られました。その唐紙を大工でもある金沢 木制作所が制作した衝立に藤田雅装堂がこちらも伝統技法によって唐紙を貼り、Lemarieのコサージュと呼応する空間を生み出しました。
コサージュはかみ添が提供した雲母引きの鳥の子和紙を用いて職人の手で一片ずつ美意識が宿され、衝立から花開くように広がり、装う人に詩情を添えます。
「芭蕉暖簾」、「ツイード暖簾」
Lesage × 石垣昭子
西表島の自然に寄り添いながら、糸芭蕉や苧麻から糸を紡ぎ、山に自生する植物で染めた唯一無二の織物を手がける石垣昭子。
本展では、世界最高峰の刺繍とツイードのアトリエ、Lesageとともに「手でしか生み出せないもの」をテーマに暖簾を制作。お互いに糸を交換し合い、両者の糸を用いながら双子のような1対の暖簾を制作。アトリエを兼ねる町家に訪れる人々を静かに迎え入れます。

<ランデブー>

<フォレスト>

<アトリエ>


















